その84 【就職活動−初のオーディション編】

時期:2006年05月30日                                            執筆日:2008年02月27日
前回の日記に大学院入試のことを書いたが、学部にいるときから院に入ったあかつきには本格的に就職活動を始めようと考えていた。だってその当時でさえ28歳だったし、ここまで本格的にやってきた以上この分野で生きていこうと思っていたからでした。

以前作っていたプロフェッショナルな履歴書(回想記その77その78参照)を、とりあえず目に付いたところに郵送しました。当時送ったのはデュッセルドルフオペラ劇場の合唱第一テノールのポストでした。オーディションの日は2006年5月30日、場所はそのオペラ劇場の合唱ホール。とりあえずこれが就職活動初めてのオーディション、緊張しないほうがおかしいってもんです。

そういえばこの時期はサッカーのワールドカップがあった時じゃなかったかな?前日にデュッセルドルフ入りし、ユースホステルに泊まった時に何人か日本人がワールドカップの観戦に来てました。ホステルの待合室のようなところで話した人のなかには、ワールドカップ観戦のために仕事を辞めて来た人もいました。すごいもんですねぇ。

そんなことはさておき次の日の朝起き、ちょっと喉に違和感を感じていたので持参していた龍角散を付属の小さじで口の中に放り込み、同室の外国人から「こいつ、朝からヤクやってるよ・・・」ってな眼差しを背中に痛いほど感じつつ劇場に出発しました。

劇場に着くと受付に話しかけ、オーディションに来たことを告げてその場で待つことになりました。劇場のコレペティ(練習ピアニスト)の人が迎えに来てくれるということだったので。そこにやってきたのは一人の日本人でした。どうやら彼はここでコレペティとして働いてるらしく、同郷の人にあったおかげで少し緊張がほぐれました。そこで少し合わせをし、時間になったので会場に向かいました。

どうやら今回オーディションに呼ばれたのは僕を含め4人らしく、会場の外で順番を待っていました。そこでは課題曲を一曲と自由曲を何曲か歌うことになっていたので、入って自己紹介をしてから課題曲を歌い始めたのでした。まずは課題曲を全員が歌わされ、それが終わると自由曲を歌うためにまた呼ばれました。

出来はなかなか良く、自分でも満足できる演奏でした。全員が歌い終わるとその場で即結果発表です。合格した人は部屋に呼ばれて契約し、だめだった人は「はい、それじゃぁどうもありがとうございました」ってな感じで帰されるのです。

自分的には結構いけるんじゃないか?と思っていたので他の人が呼ばれたときはショックでした。その人が僕も納得するほど上手ならもちろん何も思わないのですが、演奏の内容に関しては自分の音大生以下のものでした。

終わった後に合唱指導の人に呼ばれました。というのも、この人と自分の今の歌の先生が知り合いだったからで、オーディションでのことについて教えてくれました。

「君、アインハウス(先生)の生徒なんだって?僕は彼と一緒に学んだんだよー。オーディションで君は本当に良く歌ってたけど、このオペラハウスでは毎日のように練習と本番があって、今回は既にプロの合唱として長く歌っている彼を採ることにしたんだ。今の君はまだ若いし、ここにいきなり入ると君の声にとってよくないと判断したんだ。小さいか、もしくは中くらいの劇場だったら即採ってたと思うよ。」

とのことでした。

リューベックに帰る道すがら先生に報告の電話をしました。デュッセルドルフからリューベックまで電車で4時間半。トランクをごろごろ転がしながら帰路についたのでした。


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