その41 【連続コンクール編】

時期:2003年11月15日                                               執筆日:2005年12月02日
オランダでのコンクールで一位をとった興奮も冷めぬうちにまた次のコンクールの日がやってきた。なにせ一週間後ですから。

そのコンクールはリート(歌曲)中心のコンクールで、オペラやオラトリオのアリアなどは入れてはいけなかった。なので前回使ったプログラムはほとんど適用できず、新たな歌曲を色々用意せねばならなかった。ちなみにこのコンクールもオランダの違う街であった。

このコンクール、一時審査は音源を送って、選ばれた人が2時審査にオランダに向かうものだった。よく覚えてないのだが、当時はそれに受かるとは思ってなかったので2時審査に呼ばれたときはびっくりしたように思う。

会場に着いた。今回のコンクールは非公開で、参加者すら他の人の演奏を聞くことはできなかった。なので呼ばれて入って小さな舞台に上がった。持ってきた5〜6曲くらいを全部歌い終わった。そして全員(多分7人くらい)が歌い終わると皆がそこに集められ、本選に残る人が言い渡された。

このなにも起こりそうもない話の持っていき方で感づいた人もいるかもしれないが、その場ではまったくもって俺の名前はよばれなかった。その後、審査員に個人的に意見を聞く時間が持たれて参加者は先生達のところへ行っていた。俺も審査員のところへ行き自分の歌がどうだったのか聞いてみた。最初に聞いた人は音楽学者で、歌の先生ではなかった。

「いやぁここに参加者のリストがあるんだけど、これにはそれぞれが○か△か×をつけていくんだよね。最終的にで皆でそのリストを照らし合わせて本選進出者を決めるんだけど、君のところには○をつけた人は一人もいなかったよ。」

・・・・・。

ちらっとリストを盗み見たがどうやら俺がドベっぽかった。

次の審査員のところに行く。彼女はヴッパータル音大の歌の教授だった。

先「あなた、あの歌の高い音のところはよかったわよ。でも他の音域がダメだわ。」
俺「え?でも高い方苦しそうじゃなかったですか?」
先「そんなことないわよ。あのところが一番良かったわ。」

・・・・・。

次はバリトンで精力的に活動しているわりと有名な人だった。

バ「君ぃ、支えがなっとらんヨ!きちんとこうやって腹から声をださんとな!ハッ!ハッ!」
俺「はぁ・・・・。」

もっと審査員はいたのだが、もはや憔悴しきっていてそれ以上聞く気になれなかった。かなりショックだった。もちろん自分もノれてないのはわかっていたが、そこまでけちょんけちょんに言われると自分が今までやってきたことが全て崩れ落ちていってしまう。

とりあえず寝て忘れることにした。

人間万事塞翁が馬である。


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