その29 【オランダで開催された声楽コンクール結果編】

時期:2002年11月09日                                               執筆日:2005年11月15日
コンクールの会場は教会で、普段祭壇があるところが少し整理されて舞台のようになっていた。このコンクールは一般公開されていて、観客は信者用の椅子に座ってコンクールを聴いていた。

俺の出番は7番なので2つ前くらいから教会に入って客席で聴いて待っていた。やはりコンクールに出てくるだけあって皆上手い。なかには「どうかいの?」っていうヘナチョコもいたが・・・。

自分の番が回ってきた。名前が読み上げられて席を立ち、舞台に上がる。伴奏者と目配せをして歌い始めた。極度の緊張からくる喉、声帯の乾きに声がついていかず、普段の80パーセントくらいの力しか出ない。まぁ普通舞台上に立つとそんなものなのかもしれないが。それプラス緊張すると横隔膜が上がり、音をしっかり支えるための息のコントロールができなくなる。結果、高音がひっくり返ったり、演歌歌手のようなビブラートがついたり、音がきちんとはまらなかったりする。そのすべてのことが同時におきていたような気がする。もう覚えていない。

歌い終わるとまた元座っていた席に戻った。憔悴しきってのこり3人の歌を聞いていたが、一人はえっらいでかい声だった。こんな小さな教会には似つかわしくないなと思った。残りは覚えてないや。

全員が歌い終わると審査員が奥の小部屋に入っていった。客席はがやがやしている。おそらく誰がどうだったとか、1位はだれだろうとか話し合ってるのだろう。ここはオランダなのでオランダ語だ。まったく理解できない。

待つこと15分。どうやらこのコンクールの総支配人(って言うのかな?)であろう人がマイクの前に立ちなにやら喋っていた。オランダ語。そしてどうやら1位から3位までの入賞者の発表が行われるようだった。

まずは3位から。下から上っていくところは場の雰囲気を盛り上げる上で効果的だ。3位はオランダ人のバリトンだった。これには皆(後で車の中で話し合ったのだが)びっくりだった。最初ら辺に書いたヘナチョコとは彼だったからだ。しかしとりあえず皆拍手する。花をもらう。そして2位の発表。

2位はうちの学校から来ていた韓国人のバリトンだった。彼は当時34歳くらいで、結構声ができあがっていたし、その声もよかったので納得だった。これまた花をもらい、なにやら小さな封筒に入った証書のようなものももらっていた。舞台上には二人。残すはあと1位だけだった。

オランダ人の支配人が読み上げる。1位はアネッテ・レーグニッターというソプラノだった。これには会場全体が納得した。彼女は声もさることながら、表現力、演技力もすばらしく、すぐにでも働けるんではないかと思ったくらいだったからだ。彼女も花をもらい、証書を受け取る。そのあと終わりの言葉のようなものを喋ってこのコンクールは終わった。

帰りの車の中で他の人に俺の歌がどうだったか聞いてみる。優しい友達らだったので、やんわりとここがちょっとアレだったよー、みたいなことを言ってくれた。下手に慰められるよりこっちのほうがよっぽどいい。そして3位になった男の悪口が始まった。彼よりも上手い人はいっぱいいたのに、かれはきっと袖の下を渡していたにちがいない!!とかなんとか。

こんな感じでドイツに来て始めてのコンクールは苦い思い出と共に、また一つの経験となったのでした。


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