その27 【ミュンスターでのドイツオペラ初デビュー編】

時期:2002年10月頃                                                 執筆日:2005年11月13日
2002年10月、再び大学が始まった。授業は前のゼメスターと変わらず、毎日何かの授業があった。教育学、心理学などなども引き続き行われていた。

それと同時にオペラ劇場での本番が近づいてきているので練習も毎日のようにあった。10月20日が本番なので、10月に入ったときにはもう立ち稽古だった。

初めてのオペラデビューの作品がミュージカルということもあり、周りはオペラ界とは少し違った歌手達がいた。彼らはオペラ歌手とは違った歌い方をする。まぁポップスに似ているが、ミュージカル用の発声方法があり、確立されている。驚くべきことには、主役のキリストは男声では考えられないような高音を地声で出す。専門的になるが、ハイC(ツェー)の上のGの音まで出す。三大テノールの一人、パバロッティが「キング・オブ・ハイC」と呼ばれているのと比べるとわかるだろうか。日本語で言うと、ドの上のソとなる。パバロッティよりも5度も高い。裏声ならわかる。いや、実際は裏声でも難しいのだが、それを地声で・・・。こいつぁすごいと思った。

ミュージカルなので踊りもある。俺たち合唱軍団も踊らされたのだが、それに付け加えて正式なダンサーも出演している。俺たちは本当に簡単な踊り。彼らは美しい(!)踊り。あの時は全然踊りなんてしたことなかったから、彼らを見て純粋に「かっこいぃ〜!俺もあんだけ踊れたらなぁ」と思ったものだった。

そして本番の日がやってきた。合唱の部屋に入るとなにやら俺の机の前にいろいろ小さなものが置いてある。それらについてる紙には「Toi,Toi,Toi!(トイ・トイ・トイ)」と書いてあった。それらは同じ合唱の仲間からのプレゼントで、大抵皆にやっている。ちなみにトイ・トイ・トイとはドイツで舞台に立つ前などにかける「がんばって!」という感じの言葉である。おお〜、なんだか嬉しくなって皆に「ありがと〜!」などと言ってまわった。次の公演のときには俺も見習ってしようと決心したのでした。

最初の合唱の出番はキリストが町にやってきて当時の神官たちになにやら言っているところだ。踊りながら舞台上に上がり、なにやら盛り上がって終わる。

初めてドイツの劇場で歌うことができて感動した。もちろん合唱だし、その他大勢、住民Zくらいだが、オペラの舞台に立つ、スポットライトを浴びる、客に向けて声を飛ばす、俺たちの舞台に客が拍手してくれる、それら全てが自分の中に入り込んできて、歌い終わった時には身震いした。

カーテンコールで合唱が皆手を繋いで舞台の前に出る。お辞儀する。その時俺の両側にいた同僚達が俺のほうを向いてウインクなり、にこっとしたりする。「やったな!初舞台おめでとう!」みたいな感じだ。その後にソリスト達が次々現れる。もちろん拍手は彼らの方が大きいが、初めてずくし、そして将来ソリストとして劇場で働くという夢に向かっての道に足を踏み入れたことに感動していて大満足だった。

この「ジーザス・クライスト・スーパースター」は以後4ヶ月にわたり20回以上上演されて幕を閉じたのでした。


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