その24 【ミュンスターでの教会合唱団編】

時期:2002年06月12日〜                                             執筆日:2005年11月10日
前回話したコレペティのハインリッヒ先生はそのほかにも教会の合唱を指揮していて、半ば強制的にそこに入らされた。どこの合唱団も男声が足りないのである。

ドイツの大部分の教会はプロテスタントで、教会の作りはカトリックに比べて質素だ。式典も仰々しい形式にのっとったものではなく、牧師が説教をして、そのあと皆でパンとワインをいただくという感じ。その途中で季節ごとにいろいろ変わるミサ曲を合唱団が歌うのだ。

この合唱団はそんな大したものじゃなく、60くらいのオバちゃんがほとんどで、男は僕とエクストラコーラスから2〜3人くらいだった。ここの合唱は仕事ではなく完璧ボランティア。

ハインリッヒ先生がピアノを弾き、オバちゃん達に教える。びっくりしたのは、このオバちゃん方、意外に歌える!もちろんプロとは程遠いが、日本のド素人オバちゃん合唱(失礼な例えで申し訳ない)に比べると格段に声もいいし、譜読みも早い。年のせいかやはり高い方はきつそうだったが。

ここにいる人達は皆やさしかった。やはり子供も育て終えて老後の生活を満喫しようかという人達ばかりなので、若い人間は母性本能をくすぐるのだろうか?あと、外国人、とくにアジア人の男がひとりちょこんといたら興味津々なのかもしれない。

普段はその中にずっといるからわからなかったが、音楽家というのは様々なところからプレッシャーがかかってくる。人と競争して自分の地位を勝ち取っていかなくてはならないから、どうしても心がすさむ。そういう状況から普通の人とのふれあいを体験すると、ああ、人間ってやっぱこうだよなーと落ち着く。あの合唱で練習してる時は癒されたよ。オバちゃんセラピー?

教会でのミサは月に一回ごとに行われる。それプラスいろんなキリストに関する行事のときには別にミサが行われる。復活祭、昇天祭、クリスマスなどなど。

教会の合唱に入って思ったのは、ドイツの生活に密着した音楽を感じれたことだった。日本でもバッハの「クリスマスオラトリオ」とか演奏されるが、こちらでは本当に季節ごとにいろいろなミサでの演奏がある。音楽が生活の中に入り込んで当たり前のことになっている。ここは音楽をしやすく、また聴きやすい環境なのである。


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